背中の筋肉を鍛えることは美しいスタイルを実現する上で不可欠ですが、なかなか鍛えにくい部位でもあります。
フィットネス愛好家や大会に出場するようなトレーニングのレベルが高い人だけでなく、一般の方にも「逆三角形」という単語は通じるほど、背中の筋肉を鍛えることの重要性は認知されています。
しかし、効果的なトレーニング方法や背中の筋肉の仕組みを正確に理解している方は意外と多くありません。そこで今回は背中の筋肉を鍛えるメリットや各部位の特徴、トレーニング方法についてご紹介します。
まだトレーニングを始めたばかりの方にも、トレーニング歴の長い方にも有益な情報をお届けします。
背中の筋肉部位の名前【イラスト解説】
背中の筋肉は身体全体において占める割合も多く、鍛えることで美しい姿勢やフォルムを実現できるだけでなく、筋肉量の増加に伴い基礎代謝量も増加することで痩せやすく、太りにくい身体を作り上げることができます。
そんな背中の筋肉ですが、トレーニングにおいて「背中のどこに効いているか」を意識できている人は少ないです。背中の筋肉は実は「僧帽筋」「脊柱起立筋」「広背筋」「大円筋」などの部位に分かれていて、それぞれ鍛え方や鍛えるメリットは異なります。
まずは、そんな背中の各部位の筋肉について詳しく紹介します。
背中の筋肉1. 僧帽筋(そうぼうきん)
僧帽筋は、背中の一番表層にある、首から肩甲骨にかけての筋肉です。上半身の筋肉の中では5番目に体積の大きな筋肉です。
僧帽筋は上部・中部・下部に分けることができ、上部は首を動かす動作や、肩をすくめる際に働きます。中部は背伸びや深呼吸、つまり胸を張るような動作を行う際に働き、下部は主に何か物を引っ張るような、肩甲骨を下に動かす際に働きます。
背中の筋肉2. 脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
「脊柱起立筋」は頭蓋骨の下あたりから骨盤までの筋肉を指します。背中の中でも最も長く、姿勢と大きく関わる筋肉です。
多くの人が行う背中の自重トレーニングに、うつ伏せになり背中を反らすものがありますが、そのような動作をする際にも用いられ、背中を反る動きにも大きく関係しています。
背中の筋肉3. 広背筋(こうはいきん)
広背筋は脇の下から腰にかかる筋肉で、羽が生えているようなフォルムなのでご存知の方も多いと思います。主に物を手前に引っ張る動きで用いられることが多く、日常生活での動作でご説明するならばドアノブを引く動きやはしごを登る動きをする際に用いられます。
また、スポーツでは水泳などで使用される筋肉で、水泳選手の後ろ姿を注目して見ていただけると、広背筋が発達している選手が多いと思います。
背中の筋肉4. 大円筋(だいえんきん)
大円筋は肩周りにある筋肉で、肩関節を動かす動作に影響します。主に腕を内側に引き寄せるような動きや腕を後ろに回す際に用いられ、日常生活においても使用される頻度の高い筋肉と呼べます。
大円筋は負傷しやすい部位でもあり、繰り返してしまう場合も多いので適切なトレーニングを行うことが求められます。負傷が長引くと日常生活にも支障が出る場合もあり、正しいフォームをキープすることを特に求められる部位です。
背中の筋肉を鍛える効果・メリット
ここまで背中の筋肉の各部位の役割や特徴についてご紹介してきましたが、ここからは背中の筋肉を鍛える効果やメリットについて詳しく紹介します。
正しい姿勢を維持しやすくなり姿勢改善につながる
脊柱起立筋が姿勢の維持に深く関わっていることは前述しましたが、身体への負担の少ない姿勢を維持するためには背中を全体的に鍛えることがとても大切です。
姿勢が悪くなってしまう原因はデスクワークなどの長時間同じ姿勢を保つことなども挙げられますが、姿勢を維持するための背中の筋肉が弱いといった理由も考えられます。
整体などで矯正を受けた方の中には、簡単な背筋のトレーニングを勧められたことがある方も多いのではないでしょうか。背中の筋肉を鍛えることは、正しい姿勢を維持する上でとても重要なのです。
大きな背中の筋肉を鍛えることで基礎代謝向上につながる
背中の筋肉は身体全体の筋肉の中でも占める割合が多く、鍛えることで筋肉量の大幅な増加を見込むことができます。
筋肉量が増えると「基礎代謝」が向上します。基礎代謝はご存知の方も多いと思いますが、「生きているだけで消費されるエネルギー」のことで、基礎代謝が向上することで1日の内に消費されるカロリーが増え、痩せやすく、太りにくい身体を目指すことができます。
僧帽筋を適度に動かすことで肩こり改善につながる
肩の筋肉、特に僧帽筋を鍛えることは肩こりの改善にもつながります。僧帽筋は肩をすくめる動きに関係しているので、問題がある場合は肩をすくめる際に痛みが走る場合があります。
また、僧帽筋を鍛えることにより、肩周りの筋肉が刺激され、血行が促進されます。血行の促進は肩こり解消において最も重要とも言える要素ですので、僧帽筋のトレーニングは肩こり解消効果があります。
まさに“範馬勇次郎” 背中に鬼の顔を宿す
“範馬勇次郎” という名前をご存知でしょうか。グラップラー刃牙という漫画のキャラクターで、トレーニーの中には「刃牙を読んで筋トレを始めた」と言う方も多いです。
背筋が発達している人のことを「背中に鬼の顔」という表現することがありますが、まさにそれを体現してような背中は厚みがあり、全トレーニーの憧れです。
正しい方法でストイックにトレーニングを行えば、誰でも「背中に鬼の顔を宿す」ことは可能です。
背中の筋肉を自宅で鍛えられる自重トレーニング
ここからは具体的なトレーニング方法について紹介します。まずは最も手軽に、自宅でも行うことのできる自重トレーニングの紹介です。
背中の自重トレ1. バックエクステンション
バックエクステンションは脊柱起立筋をメインに鍛えるトレーニングです。脊柱起立筋だけでなく、大臀筋やハムストリングなど身体の背面を全般的に鍛えることが可能です。
トレーニングを行う場所は、なるべく平らで柔らかい場所で行うことをおすすめします。硬い床などで行うと身体を痛める場合もあるので、ヨガマットなどを利用する方が良いでしょう。
How To
- 床にうつ伏せになる
- 上半身を起こす
- ゆっくりと元の体勢に戻る
- 反動を使わずに、上半身を起こす
上記を10〜15回、3セットほど行うようにしましょう。
背中の自重トレ2. ヒップリフト
ヒップリフトは大臀筋・ハムストリングスを鍛えるトレーニングですが、脊柱起立筋を鍛えるのにも効果的なトレーニングです。
動作中に背中を固定する必要のあるヒップリフトでは、脊柱起立筋にも強い負荷がかかるので同時に鍛えることができます。常にかかとに力を入れ、重心をかかとに持っていくことでさらなる効果を実感できます。
How To
- かかとに重心を保ち、ゆっくりとお尻を上げる
- お尻から胸までを一直線に保ち、一度停止する
- ゆっくりとお尻を下ろし、マットに着く直前で再度お尻を上げる
こちらも10〜15回、3セットほど行うようにしましょう
背中の自重トレ3. バードドッグ
バードドックは腰痛対策にもなるトレーニングです。体幹や脊柱起立筋を中心とした背中全体の筋肉を鍛えることができ、サッカー選手などの多くのアスリートも自主トレーニングに導入している種目になります。
また、体幹を鍛えることで他の部位のトレーニングの際の重心も安定し、トレーニング効果を高め、怪我を未然に防ぐこともできます。
How To
- 手をついて四つ這いになる
- 右手と左脚を結ぶ線が一直線になるように同時に伸ばし、肘と膝を近づける(この際、背中が丸まったり、腰が反ったりしないように気をつける)
- 反対側も同じように行う。
こちらも1セット10〜15回、3セットが基本です。
背中の自重トレ4. チンニング(要チンニングバー)
次はチンニングをご紹介します。いわゆる懸垂のトレーニングですが、効果が高いトレーニングになります。フィットネス系のコンテストで優勝した選手の中には毎日懸垂を行う方も居るそうです。
チンニングは広背筋・僧帽筋などの背筋群はもちろん、上腕二頭筋を鍛えることもできるので、一度で多くの部位を鍛えることのできる、忙しい方にもおすすめのトレーニングです。
How To
- 手幅を肩幅より広めに設定してバーを握ってぶら下がる
- 胸を張りながら身体を引き上げていく
- 十分収縮したら元の位置に戻す
背中の筋肉を鍛えるダンベル筋トレメニュー
次はダンベル用いた背中のトレーニングをご紹介いたします。ダンベルを用いたトレーニングは可動域が広く、ジムでも自宅でも行うことができることがメリットです。
ダンベルの背中トレ1. ワンハンドローイング
ワンハンドローイングでは広背筋や僧帽筋、大円筋などを鍛えることができます。背筋全体の部位をバランスよく鍛えることが可能なトレーニングで、多くのトレーニーが好んで行っています。
ダンベルを強く握りすぎると負荷が分散してしまい、トレーニング効果が下がってしまうため、一回ごと丁寧にダンベルを引き上げることがポイントです。
How To
- 足を肩幅ほどに広げる
- 片手と片足をベンチに乗せる
- 肩は上げず、軽く胸を張りながらダンベルを上げ下げする
ダンベルの背中トレ2. ダンベルデッドリフト
ダンベルデッドリフトは僧帽筋や広背筋、脊柱起立筋群を鍛えられるだけでなく、下半身の大臀筋やハムストリングスも鍛えられます。
多くの筋肉を動員することで高重量を持ち上げられるので筋力アップ・筋肥大効果が高く、バランスの取れた美しい身体を作り上げられるので、ダイエット目的の方にも、大会出場を目指すような方にもおすすめできるトレーニングです。
How To
- 腕を自然にぶら下げた幅に広げ、ダンベルはハの字になるように置く
- ダンベルの下に足をもぐりこませる形を取る
- 腰を曲げないように意識し、お尻を引いてダンベルを手に取る
- お尻から頭までの直線をキープし、ダンベルを上下させる
こちらは10回×3セットをおすすめします。
ダンベルの背中トレ3. ダンベルシュラッグ
ダンベルシュラッグは僧帽筋や三角筋を鍛えることができるトレーニングです。
まず第一のメリットとして、肩周りの筋肉に厚みを出すことができ、これにより迫力のある肩を作り上げることができます。また、肩周りの筋肉が強烈に刺激されることにより血流が良くなり、肩こりも改善できます。
その他にも、僧帽筋も姿勢を維持する上で重要な筋肉であり、僧帽筋を鍛えることで姿勢も改善され、猫背対策にもなります。
How To
- 足を肩幅分ほど広げる
- ダンベルは身体に付かないようにし、肩からまっすぐと垂らす
- 背筋をしっかりと伸ばし、ダンベルは横に構える
- ダンベルを持ち上げる
- 息を吸いながら、ダンベルをゆっくりと下げる
こちらは8〜12回を3セットほど行うことをおすすめします。
背中の筋肉を鍛えるジムのマシンメニュー
最後は、ジムのマシンで行う背中の筋トレメニューです。ジムのマシーンを用いたトレーニングはフォームを安定させやすいため、軽い重量なら初心者でも効かせやすく、高い効果が見込めます。
背中の筋トレマシン1. ラットプルダウン
ほとんどのジムに必ずと言ってもいいほど設置されているのが、ラットプルダウンのマシンです。それほど効果があり、多くの人が行っている証拠ですが、なかなか効かせにくいトレーニングでもあります。
広背筋、僧帽筋、大円筋、上腕二頭筋を鍛えられるため、背筋トレーニングといえば時間の無い方はこれだけ行う場合もあります。胸を張ることを意識するとトレーニング効果が高くなります。
How To
- 肩幅よりも広くバーを握る
- バーを上に向かって持ち上げる
- ゆっくりと引き下げる
- 胸に引きつけながら、肘をあばらにつけるように閉じる
- 再び持ち上げる
こちらは8〜12回を3セット行うのが主流です。
背中の筋トレマシン2. ケーブルローイング
ケーブルローイングは僧帽筋や広背筋に効果のあるトレーニング種目です、長背筋群や上腕二頭筋にも効果があり、多くの部位を同時に鍛えられるのでおすすめの種目です。肩甲骨を寄せつつ腕を引き寄せることがポイントです。
顎を上げると背筋の収縮がさらに促進されるので、終盤に負荷が増してきた時にもなるべく顎を引かないようにしましょう。
How To
- シートに座り前傾姿勢になる。腕を伸ばし、バーを握る
- 上半身がちょうど床と直角になるまで、腕を伸ばし、上半身を起こす
- 上半身を起こし、後ろに傾けないように注意しながら肘を曲げ、バーを引き寄せる
- バーをお腹の位置まで引き寄せ、引くときと同じフォームで元に戻る
こちらも8〜12回の3セットで行うことをおすすめします。
背中の筋トレマシン3. ケーブルプルオーバー
ケーブルプルオーバーは広背筋と大円筋、大胸筋、上腕三頭筋など様々な部位を同時に鍛えることのできる種目で、ややマニアックですが効果のある種目です。ケーブルを使用することで負荷が逃げにくく、高い効果を期待できる種目です。
特に広背筋に対する効果が最も高く、「鬼の背中」を作るには必須の種目で、フィジーク大会などに出場する選手が多く行っています。
How To
- 胸を張ったまま身体を倒す。肩を耳に近づけるように肩甲骨上げ、アタッチメントを握る
- 肩を下げて胸を張るようにして肩甲骨を下げる
- 骨盤を前に傾げ、胸を張ったまま身体を倒す。肩を耳に近づけるようにして肩甲骨を挙上してアタッチメントを握る
- 肘の曲げ伸ばしをなるべく抑え、肩を下げ、胸を張るように肩甲骨を下げる
【Q&A】背中の筋肉について多い質問
背中のトレーニングはなかなか正しい方法が分からず、トレーニング上級者でも悩む方は多いです。そこで背中のトレーニングに関する質問で多い内容をまとめました。
Q. 背中が筋肉痛で痛い場合のストレッチ方法は?
背中の筋肉痛の多くは脊柱起立筋の痛みであることが多いので、脊柱起立筋を中心に伸ばすことをおすすめします。
How To
- 足を肩幅の1.5倍ほどの幅に開き、両手を両膝に置く
- 腰の位置をキープした状態で、片方の肩を前に向かって突き出す
- 20秒を3セット行い、反対側も同様に行う
このストレッチは腰痛に悩む方にも効果的で、身体の背面のトラブルを全般的に改善することができます。
Q. 背中の筋トレで負荷が感じられない原因は?
まずはフォームを見直すことをおすすめします。背中のトレーニングは正確なフォームで行わないと腕や肘に負荷が逃げてしまうことも多いです。
また、デッドリフトなどの負荷が強い種目を安全の範囲内で行ったり、重量を変えてトレーニングしてみるのも一つの方法です。背中に強い負荷をかけ、意識すべき部位を感じることもおすすめです。
Q. 背中の筋肉がなかなかつかない原因は?
背中の筋肉がつかない原因は様々ありますが、「追い込みが足りない」ことが考えられます。背中のトレーニングの翌日など、筋肉痛が全く無い人も多いのではないでしょうか。
もちろん筋肉痛さえあれば筋肉が成長するわけでもありませんが、トレーニングの強度が足りなかったり、正しいフォームで行えていない可能性があります。
あまりにも成長が遅い、効かせられている実感が無い、といった方は一度パーソナルトレーニングを受けてみるのも一つの手です。
上手く背中に効かせるコツをつかんでしまえば、次回以降ひとりでのトレーニングもより効果的に取り組めるはずです。
背中の筋肉を自分に合った筋トレで鍛えよう
ここまで背中の筋肉のそれぞれの部位の特徴や役割、効率的な鍛え方や背中のトレーニングをすることのメリットをご紹介しました。
ひとくちに背中の筋肉と言っても広背筋や僧帽筋、大円筋など様々な部位があり、それぞれを意識してトレーニングをすることが大切です。