ベントオーバーローイングは背中の筋肉を鍛えるトレーニングで、腕を開いて閉じる動作に使われる広背筋をしっかりと鍛えたい方におすすめです。
この記事ではベントオーバーローイングの概要・筋肉へのアプローチ・正しい回数と重量に加えて、順手と逆手のそれぞれで行う方法について詳しく紹介します。
ベントオーバーローイングとは
ベントオーバーローイングとは、専用のバーベルやダンベルを使って背中の筋力や筋量をアップさせるウエイトトレーニングの一種です。
腕の筋肉である上腕二頭筋を使わずに背中を意識して負荷をかけることで、広背筋・上腕二頭筋・僧帽筋・菱形筋などの背中にある筋肉をバランス良く刺激します。
ベントオーバーローイングが効果的な筋肉部位
ベントオーバーローイングが効果を発揮するのは背中の筋肉で、なかでも腕を開くための筋肉である広背筋は、負荷をかけることで強く大きな筋肉へと成長します。
背中の中心の筋肉にまんべんなく効くため、広背筋のほかに僧帽筋のパンプアップにも効果的。
僧帽筋は重いものを持ち上げたり肩甲骨を動かしたりする筋肉なので、肩甲骨を意識することで僧帽筋をしっかりと鍛えることができます。
ベントオーバーローイングで使う筋トレマシン・器具
ベントオーバーローイングには、以下の器具・マシンを使用します。
- バーベル
- ダンベル
- スミスマシン
ベントオーバーローイングに使われる筋トレマシンには、両腕で同時につかむバーベル、左右の手でそれぞれ握るダンベルのほかに、スミスマシンを使う方法もあります。
バーベルやダンベルは自分でフォームを固定して行うトレーニングで、自由に軌道を調整できることがポイント。
特にダンベルは手首が自由に動かせるので可動域が広く、脇を締めて広背筋に刺激を加えやすいメリットがあります。
スミスマシンはバーの軌道が固定されるので、目的の部位だけを鍛えたい場合に効果的。足元に器具を落とす心配がないので、安全に行うことができます。
ベントオーバーローイングの平均重量(男女別)
ベントオーバーローイングの平均重量は体重60kg~80kgの初心者の男性で29kg~44kg、体重50kg~65kgの初心者の女性で12kg~15kgです。
中級レベルでは体重60kg~80kgの男性で63kg~85kg、体重50kg~65kgの女性で35kg~40kgが平均値。上級者やプロレベルになると体重以上の重さを持ち上げます。
筋肉量や体格、フォームの習熟度によって負荷が変動するため、ジムでトレーニングする場合はトレーナーの指導のもとで、無理のないところからスタートしましょう。
いきなり高負荷のバーベルを使うと背中や腕を痛めるおそれがあるため、初級~中級までは腕や背中に無理のない負荷で動作を行いましょう。
ベントオーバーローイングの正しいフォームとやり方
ベントオーバーローイングは器具の下準備やセッティング、安全に使用できることを確認してから正しいフォームを作り、動作を行います。具体的には以下の流れで行います。
1. 器具の準備とフォームのチェック
スタートの前に、バーベルやダンベルなどの重さが合っているか確認しましょう。
体に合わない高負荷の器具を無理に持ち上げようとすると、筋肉を痛める可能性があります。
また、器具に汗がついていると握ったときに手から滑り落ちるおそれがあります。汗はきれいに拭き取りましょう。
スミスマシンは事前に重さの調整を行い、正しいポジションがとれることを確認してから使用します。
2. スタートポジションのセッティング
安全性が確認できたら、スタートポジションをとります。足を肩幅に開いて立ち、やや前傾姿勢になって背筋はまっすぐに伸ばします。
膝が前に出ないように膝をしっかりと引いてお尻を後ろに突き出し、順手・逆手のどちらかでバーベルやダンベルを握ります。
腰やお尻に負担がかかるおそれがあるので、背中が丸まらないように注意しましょう。
3. バーベルを腹部に向かって引き上げる
バーを握ったら、息を吐いてお腹の方向(みぞおちからおへその辺り)に引きつけます。このとき、背中の筋肉を使って引きつけていることを意識します。
バーは必ずお腹の方向へ引きつけ、腕だけで持ち上げないように注意し、背中が曲がらないようにします。ダンベルを使う場合も、肩甲骨を寄せて背中を意識しましょう。
姿勢を崩さないように、しっかりと膝が引かれているか(お尻を後ろに突き出しているか)確認します。
4. バーベルを元のポジションに下ろす
バーベルをお腹まで持ち上げたら、息を吸って膝のすぐ下辺りまでバーを引き下げます。
腰が丸まらないように注意し、姿勢の乱れが出ないように注意しながら、最初の位置までバーを戻しましょう。
最初の位置に戻ってきたところまでがベントオーバーローイングのワンセット。あとは所定の回数分、引いて下げる動作を繰り返します。
ベントオーバーローイングの重量・回数の目安
ベントオーバーローイングは、筋肉量や目的に合わせて重量・回数を設定することでゴールに合わせた効果が期待できます。以下の設定方法を参考に調整を行いましょう。
目的に合わせて重量や回数を設定する
筋肉に負荷をかけるトレーニングは、目的に応じて3段階に分けられます。
- 筋力向上:筋力をつけていく
- 筋肥大:筋肉を増強して大きくする
- 筋持久力向上:筋肉の持久力(スタミナ)を高め、運動のパフォーマンスを上げる
レベル1がもっとも負荷を軽くして行える運動であり、レベル2からレベル3に進むごとに高い負荷をかけて筋肉を増強・パフォーマンスの向上を目指していきます。
トレーニングではRM(Repetition Maximum:反復可能最大重量)と呼ばれる指標が目安として使われます。RMとは動作を反復できる限界回数のことです。1RMは「1回で限界を迎える負荷の運動」を指します。
目的 | 回数(RM) |
---|---|
筋力向上 | 3~7RM |
筋肥大 | 8~12RM |
筋持久力向上 | 13~20RM |
セット数は3〜5回が目安
ベントオーバーローイングはいきなり重量のある器具を使うと腕を痛めるおそれがあるため、10kg~30kg程度から始めます。
背中の筋肉を鍛える運動で、筋力向上や筋肥大を目指すなら3回から7回以上、負荷を軽くして8回から12回程度が目安です。
広背筋や僧帽筋に十分な筋肉がついており、筋肉そのものの持久力を高める場合はさらに負荷を軽くして、13回以上の往復動作を行います。
ベントオーバーローイングの効果を高めるコツ3つ
ベントオーバーローイングの効果を高めるために必要なコツは大きく分けて3点あり、いずれも安全にトレーニングを続けるために欠かせないポイントです。
以下に紹介するポイントを押さえて、正しくトレーニングを行いましょう。
コツ1. 正しいフォームを意識する
バーベルやダンベルはやや軽めのものを選びましょう。スミスマシンも同様に、軽めの重量設定で十分に慣らしてから負荷を少しずつ上げていくのが理想です。
万が一重量のある器具を腕で持ち上げてしまうと、一気に負荷がかかって腕を痛めるおそれがあるため、安全に使用できる重量からスタートするようにします。
すでに筋肉量が十分であり、器具の重さがやや物足りないと思っても、反復可能最大重量(RM)の範囲で動作を繰り返せるように、無理のない重さを選びましょう。
コツ2. やや軽めの器具から始める
フォームが確立されておらず、筋肉量も十分にない状態で重量のある器具を使うと、体を痛めたり思わぬトラブルを引き起こしたりする原因になります。
初心者のうちはやや軽めのもの(男性は20kg程度、女性は12kg程度)の器具で正しいフォームを確立し、慣れてきたところで重さを増やしていくことをおすすめします。
筋肉がついてくると重量に負けないパワーがついてくるので、トレーニングの習熟度に合う重さでトレーニングを続けましょう。
コツ3. 広背筋を意識しながら動く
背中は腕や足のように筋肉の状態を目で見て確認できない場所のため、トレーニング中は特に意識して肩甲骨を寄せ、広背筋に力をかけて動かすようにします。
ベントオーバーローイングには器具や手の位置・幅などによっていくつかのバリエーションがありますが、いずれも背中と体幹を使って引き上げていく運動です。
動作中に広背筋の位置や筋肉の動きをしっかりと意識することで、トレーニングのパフォーマンスを上げることができます。
ベントオーバーローイングの種類・バリエーション
ベントオーバーローイングには、順手で行う「オーバーグリップ・ベントオーバーローイング」と逆手で行う「アンダーグリップ・ベントオーバーローイング」があります。
それぞれの特徴とやり方を確認していきましょう。
【順手】オーバーグリップ・ベントオーバーローイング
オーバーグリップ・ベントオーバーローイングは順手(オーバーグリップ)でバーベルを持ち上げるトレーニングです。もっともスタンダードな方法で、広背筋の上部を中心に鍛えることができます。
- バーベルを上からしっかりと握る
- お尻を突き出し背中をまっすぐに
- 体幹を使いバーベルを持ち上げる
- 体幹を崩さずバーベルを下ろす
バーベルを手のひらが下向きになるようにしっかりと握り、軽く前傾した姿勢で背中をまっすぐにします。
お尻を後ろに突き出し、膝を曲げないように注意しながら背中と体幹でバーベルを持ち上げます。
肩甲骨を寄せることを意識し、フォームが乱れないようにしながらバーベルを膝下まで下ろします。
【逆手】アンダーグリップ・ベントオーバーローイング
アンダーグリップ・ベントオーバーローイングは逆手(アンダーグリップ)にバーベルを持ち上げるトレーニングです。逆手でバーベルを持つことによって肘が閉じやすくなり、広背筋の下部分が鍛えられます。
- バーベルを下からしっかりと握る
- お尻を突き出し背中をまっすぐに
- 体幹を使いバーベルを持ち上げる
- 体幹を崩さずバーベルを下ろす
バーベルを手のひらが上向きになるように下から握り、軽く前傾してお尻を後ろに突き出し、背中をまっすぐにしてバーベルを引き上げます。
膝が曲がりすぎないようにフォームに注意し、背中の筋肉を中心に体幹を使ってバーベルを持ち上げ、膝下まで下ろします。逆手に慣れていない場合は順手で慣らしてから行いましょう。
【Q&A】ベントオーバーローイングについて多い質問
ベントオーバーローイングは背中を鍛えるトレーニングですが、他のトレーニングと混同しないように注意し、正しいフォームを身につけましょう。
以下に、トレーニングに際して多く寄せられる質問への回答をまとめました。
Q. ワンハンドローイングとの違いは?
ワンハンドローイングはフラットベンチと呼ばれるベンチに片足を乗せ、片方の腕でダンベルを引き上げて、肩から背中にかけて左右の筋肉を鍛えるトレーニングです。
ベントオーバーローイングは両腕を使ってバーベルまたはダンベルを引き上げる運動なので、背中全体をまんべんなく鍛え上げることができます。
Q. ダンベルを持つときの手の幅の目安は?
ダンベルを持つ手の幅を広くとると広背筋の外側~僧帽筋から上背にかけて負荷がかかり、反対に手幅を狭くすると広背筋の中央部分に効きます。
どこを鍛えたいかによって手幅を工夫することができますし、手幅を広くして回数をこなした後、手幅を狭くとって同じ回数だけ反復すると、広背筋の外側と中心のそれぞれを均等に鍛えられます。
Q. チューブを使っても同じトレーニングができる?
ベントオーバーローイングはチューブを使って行うことも可能で、前傾姿勢から腕を伸ばした位置でハンドルを持ち、太ももに沿うようにして引き上げます。
背筋をまっすぐにしてお尻を突き出し、肩甲骨を意識する点は通常のベントオーバーローイングと同じです。
肩甲骨をしっかりと寄せたら顎を上げて背筋の収縮を確認し、筋肉に負荷をかけながら元に戻りましょう。
ベントオーバーローイングで広背筋を効果的に鍛えよう!
ベントオーバーローイングはフォームを間違えると腰や膝に負担がかかるため、必ず背中の筋肉を使わなければなりません。
反動を使ってバーベルやダンベルを持ち上げてしまうとトレーニングの効果が薄れてしまうので、背筋の負荷を意識しながら背中を使って動作を繰り返しましょう。
手幅の広さや順手・逆手での持ち替えによって異なる部位に負荷がかけられるので、いろいろな方法を組み合わせたオリジナルメニューで鍛えていく方法もおすすめです。