インクラインベンチプレスで大胸筋の上部を集中して効かせるやり方やコツについて詳しくご紹介します。
ベンチプレスなど大胸筋の中部から下部にかけて鍛えるトレーニングは、知名度が高くトレーニングに取り入れている方も多いですが、鎖骨の下から盛り上がった胸板を作るためには大胸筋上部のボリュームアップが欠かせません。
「大胸筋を鍛えているけど、思ったようなラインにならない」と悩んでいる方は、インクラインベンチプレスをメニューに取り入れて、大胸筋全体でバランスのとれた胸板やバストラインを作りましょう。
初心者の方にも正しいフォームや重量・回数・角度の設定がわかりやすいように解説しているので、自宅やジムでのトレーニングの参考にしてください。
インクラインベンチプレスとは
インクラインベンチプレスは、インクラインベンチを使用するベンチプレスのバリエーションの一つです。
インクラインベンチを使って座面に傾斜をつけることで、腕を身体の斜め上方に押し出すような軌道の動作になるのが大きな特徴です。
よく似たトレーニングにインクラインダンベルプレスがありますが、インクラインベンチプレスはバーベルを使うことで肩の可動域を自然に広く取ることができ、ラックなどを使うことで安全性も高められるため、初心者の方にもおすすめのトレーニングです。
インクラインベンチプレスが効果的な筋肉部位
インクラインベンチプレスでは以下の部位の筋肉を効果的に鍛えられます。
- 大胸筋上部
- 三角筋
- 上腕三頭筋
インクラインベンチプレスで効果的に鍛えられるのは、大胸筋の中でも特に上部です。
大胸筋上部は胸から肩に繋がる筋肉で、胸を斜め上に押し出す働きがあります。大胸筋上部を鍛えることで盛り上がりのあるメリハリの効いた胸板が作れます。
また、バーベルトレーニングは大胸筋だけでなく、上半身の筋肉をバランスよく鍛えられるのが特徴です。
インクラインベンチプレスでは、大胸筋上部と協働する肩の三角筋や、二の腕の上腕三頭筋も同時に鍛えることができます。
インクラインベンチプレスで使う筋トレマシン・器具
インクラインベンチプレスで必要なのは以下の筋トレマシンや器具が必要になります。
- インクラインベンチ
- バーベルシャフト&プレート
- リストラップ
まず、インクラインベンチプレスに欠かせないのがインクラインベンチです。上半身に傾斜をつけるだけでなく、臀部の座面も反対に傾けることでトレーニング中に身体が滑ってしまうのを防げます。
自宅でトレーニングする方も用意しておくと実施できるメニューのバリエーションが増えるため、導入を考えても良いかもしれません。
バーベルは、ダンベルと共用できるタイプのプレートとシャフトが便利です。ラバータイプのプレートだと床が傷つくのを防げます。
また、バーベル系のトレーニングはどうしても手首に負担がかかりやすくなるため、できればリストラップも用意しておきましょう。
高重量を目指すわけではなくても、怪我を防ぎながらトレーニングを継続するのに必要なアイテムです。
インクラインベンチプレスの平均重量(男女別)
インクラインベンチプレスで上げられる重量は、その人の体重や性別、トレーニングレベルによって異なります。
ただし、一般的にはフラットベンチで実施するベンチプレスの「60%~70%」が重量の目安と言われています。
あくまで目安となりますが、初級者から中級者だと体重75kgの男性で60kg、体重55kgの女性で35kgくらいが一つの目標になります。
まずは無理のない重量からはじめて、少しずつインクラインベンチプレスでも上げられる重量を増やしていきましょう。
インクラインベンチプレスとデクラインベンチプレスの違い
インクラインベンチプレスと同じくベンチプレス系のバリエーションの一つにデクラインベンチプレスがあります。
インクラインベンチプレスとデクラインベンチプレスの主な違いは、以下の通りです。
ポイント
- インクラインベンチプレス:頭の位置を身体より高く上げて腕を身体の斜め上方に押し出す動作になる
- デクラインベンチプレス:頭の位置を身体より下げるデクラインベンチを使って腕を身体の斜め下に押し出す軌道になる
インクラインベンチプレスでは大胸筋上部が鍛えられますが、デクラインベンチプレスは大胸筋下部を効果的に鍛えられます。また二次的に大胸筋下部と協働する上腕三頭筋のトレーニングにもなります。
様々な角度から大胸筋に刺激を入れることでより効果を上げることができるため、インクラインベンチプレスと併せてメニューに組む人が多いです。
少し値が張りますが、インクラインベンチとデクラインベンチの両方の機能を持ったベンチも販売されています。
インクラインベンチプレスの正しいフォームとやり方
1. ベンチの角度を30〜45度に合わせて調節する
インクラインベンチの角度は30〜45度の間で調節します。初めての方なら、まずは30度から始めるようにしましょう。
またインクラインベンチは、臀部の座面を頭側とは反対方向に傾けることで身体が滑るのを防げるので角度を調節するのを忘れないようにします。
角度を調節したら、バーベルをラックにセットしてベンチに仰向けになります。
2. 肩を寄せしっかりとブリッジを作り、スタートポジションをとる
ベンチプレスと同じように、大胸筋を鍛えるトレーニングではしっかりと肩甲骨を寄せてブリッジを作るようにしましょう。
ブリッジを作ったら、バーベルを少しナロー気味にグリップします。男性だと81cmのグリップラインに小指が当たる程度が目安です。
ラックアップしたら、バーベルを胸の真上まで水平移動しましょう。
3. 垂直の軌道を意識してバーベルを上げる
バーベルを上げる際には、垂直の軌道を意識してまっすぐ上げるようにすると大胸筋上部に効果的に効かせることができます。
また肘を張ってしまうと刺激が大胸筋から抜けてしまうため、インクラインベンチプレスのトレーニング中は常にバーベルの真下に肘が来るように、肘を閉じるイメージを持つようにしましょう。
肘が閉じた上体でバーベルを上げると、腕を前方に上げる理想的な「屈曲」の動作となり、大胸筋上部が効いているのを確認できます。
4. 肩の寄せを崩さないようにしながらバーベルを下ろす
バーベルを下げる際には、肩甲骨を寄せた状態をキープしたまま、ゆっくりと丁寧に胸の真ん中へと下ろします。
下げる際に胸に当たるところまで落としてしまうと三角筋のオーバーストレッチになり痛みや怪我の原因になるため、柔軟性にもよりますが大胸筋から3~5cm浮かせたところでバーベルを止めるようにしましょう。
インクラインベンチプレスの角度・重量・回数の目安
インクラインベンチプレスは、「大胸筋上部のボリュームを付けたい」「筋力をアップさせたい」など、トレーニングの目的に応じて重量や回数を調節することが重要です。
トレーニングレベルに合わせたインクラインベンチプレスのメニューの設定方法をご紹介します。
インクラインベンチプレスの角度は30〜45度が目安
インクラインベンチプレスの大きな特徴は、インクラインベンチを使って頭を身体よりも高くするところですが、「角度をどれくらいにしたら良いか」と迷う方も少なくありません。
基本的には、インクラインベンチプレスの角度は35~45度で調節しましょう。初級者の方であれば30度から始めてみてください。
インクラインベンチプレスでベンチの角度を付けすぎてしまう(45度より大きくする)と、刺激が大胸筋上部から肩や腕に抜けてしまうため、効果的な大胸筋のトレーニングが難しくなります。
目的に合わせて重量や回数を設定する
インクラインベンチプレスをトレーニングに取り入れる場合には、目的・効果に応じて重量と回数を設定するようにしましょう。
重要になるのがRM(=Repetition Maximum)の確認。
RMとは「反復可能最大重量」のことです。例えば、インクラインベンチプレスで40kgのバーベルを10回上げ下げするのが限界の場合、40kgが「10RM」になります。
各自のRMを目安にして、目的別にトレーニングの重量と回数を以下のように決定します。
目的 | 回数(RM) |
---|---|
筋力向上 | 3~7RM |
筋肥大 | 8~12RM |
筋持久力向上 | 13~20RM |
例えば、筋肥大が目的で胸板を厚くしたい方は、10RMの重量で「インクラインベンチプレス×10回」が1セットになります。
高重量を目指すための筋力向上なら、より重い3〜7RMで少ない回数のトレーニングが必要になります。逆に、コンタクトスポーツなどのために筋持久力向上を目的にする場合には、13~20RMの比較的軽い重量で回数を増やすトレーニングが必要になります。
回数や重量に関係なく共通するのは、「限界まで大胸筋をしっかり追い込む」ことです。
セット数は3〜5回が目安
インクラインベンチプレスのセット数は3回から5回に設定するのが目安です。
1セット目から高重量を上げてしまうと怪我に繋がるので、まずは自分の設定したRMの半分くらいの重量で1~2セットをアップして、筋肉の温度や関節の柔軟性を上げてからメインセットを実施します。
特に後半のセットになると辛くなって本来のRMが上げられなくなってしまいますが、その場合には回数を減らすのではなく、重量を調整して設定した回数をこなすようにしましょう。
インクラインベンチプレスの効果を高めるコツ3つ
インクラインベンチプレスをメニューに取り入れていても、「なかなか大胸筋上部に効いている感覚がしない」と感じる方が少なくありません。
しっかりとインクラインベンチプレスで大胸筋上部に効かせるための3つのコツをご紹介します。
コツ1. 肩で上げないために肘を閉じる
ベンチプレス系の中でも、特にインクラインベンチプレスはバーベルを「肩で上げない」イメージが重要になります。
肩で上げると二次的な三角筋や上腕三頭筋へ負荷が逃げて大胸筋上部へ効かなくなります。そのため、大胸筋上部に常に刺激を与えるために、肘を閉じる動作が欠かせません。肘を閉じて、常にバーベルの真下に肘が位置するようにして、動作での肩の関与をできるだけ減らすようにしましょう。
特に高重量を上げる時には、力むと肩が上方へ動き、肩と腕の力で上げてしまいやすくなるので肘の位置に注意します。
コツ2. バーベルを持ち上げる際に腰を浮かせない
回数を重ねていくと筋肉疲労も溜まって、腰を浮かせながらバーベルを持ち上げたくなりますが、それだとせっかくインクラインベンチで頭を身体よりも上げているのにインクラインベンチプレスならではの「身体の斜め上方へ押し出す」軌道が失われてフラットベンチと変わらなくなります。
そのため、インクラインベンチプレスでは、セット数を重ねて辛くなっても腰は常にベンチに付けた状態をしっかりキープするようにしましょう。
また腰を浮かせないと上がらない場合には、バーベルの重量を調整しましょう。
コツ3. 肩関節の柔軟性を高めるストレッチを取り入れる
ベンチプレス系のトレーニングは全般的に肩関節の柔軟性が求められますが、特にインクラインベンチプレスは肩の痛みを感じる方が多く、怪我なくトレーニングを続けるには上半身の柔軟性向上が重要になってきます。
日頃から、肩甲骨をしっかりと寄せて胸を張るストレッチを隙間時間で実施しましょう。バーベルを持たない状態で肩を寄せて腕を上げ下げする動作を繰り返すことで肩関節の柔軟性を高めて、可動域を広くすることができます。
【Q&A】インクラインベンチプレスについて多い質問
インクラインベンチプレスは、ベンチプレスと比べてそこまで認知度が高いわけではないため、初級者の方はメニューに取り入れていても「これで合っているのかな?」と疑問に感じることもあると思います。
インクラインベンチプレスを正しく実施するためによくある質問にお答えします。
Q. インクラインベンチプレスをすると肩が痛くなるのはなぜ?
インクラインベンチプレスで肩の痛みを感じる方は、以下のどれかが当てはまっている場合が多いです。
チェックポイント
- バーベルを斜め上方(頭の方)に向かって上げている
- バーベル動作の際に、肩甲骨を寄せられていない
- バーベルを胸に当たるところまで下げている
特にインクラインベンチプレスに慣れていない方だと斜め上方に上げるミスが多く、負荷が大胸筋から三角筋へ抜けてしまうだけでなく、肩関節に負担がかかり痛みの原因になります。
ベンチに傾斜がついているため、垂直に上げるだけで十分身体の斜め上方に上げる動作になります。
また、トレーニング中は自分ではフォームがわかりにくいので、誰かに見てもらうか、スマホで動画を撮影して、正しいフォームになっているか確認するようにしましょう。
Q. グリップの持ち方でインクラインベンチプレスの効果は変わる?
インクラインベンチプレスには「クローズグリップインクラインベンチプレス」と「ワイドグリップインクラインベンチプレス」というバリエーションもあります。
グリップを狭くして持つと、大胸筋の内側に効かせやすくなります。逆にワイドに持つと大胸筋の外側に効果的です。
また、Chris Barnett氏らの研究によると、大胸筋上部への刺激を強めるにはナローグリップが効果的で、ワイドグリップにすると大胸筋下部への刺激が強まるという結果も報告されています。
Q. 大胸筋の肥大にはインクラインベンチプレスと何を組み合わせたら良い?
筋トレは筋肉の強度や体積の大きな順に鍛えるのがセオリーのため、大胸筋であれば以下の順番になります。
- 大胸筋全体:ベンチプレス、ダンベルプレスなど
- 大胸筋下部:デクラインベンチプレス、ディップスなど
- 大胸筋上部:インクラインベンチプレス、インクラインチェストプラスなど
- 大胸筋内側:ダンベルフライ、ケーブルフライなど
自宅でトレーニングするのか、ジムに行くのかでも実施できるメニューは変わってきますが、常に上記の順番で大胸筋を鍛えるメニューを組むようにしましょう。
インクラインベンチプレスで大胸筋上部を効果的に鍛えよう!
ベンチプレスのバリエーションでもインクラインベンチを利用して大胸筋の上部を効果的に鍛えられるインクラインベンチプレスのやり方やコツについてご紹介しました。
インクラインベンチプレスは、鎖骨の下から盛り上がったボリュームのある胸を作るのに効果的なトレーニングメニューです。
ベンチプレスと比べると若干難易度が高く、気をつけないと肩や腕の力を使ってしまいやすいため、今回ご紹介したポイントや注意点を確認しながら正しいフォームでインクラインベンチプレスを実施するようにしましょう。